高齢ドライバーの交通事故が問題になっています。新しくなった道路交通法で医師の診断が必須となった認知症、高齢者が免許症を返納しない理由について書いています。
道路交通法の改正
高齢ドライバーによる交通事故が増えています。今までは問題なく運転できていたのに、最近どうも運転操作が鈍くなった、車をこすることが増えたなど本人や家族が不安になることはないでしょうか。
交通事故は決して高齢者だけの問題ではありませんが、認知症や身体機能の衰えにより事故を起こしやすくなってしまいます。そのため道路交通法が改正されます。
現行法では、3年に1度の更新時のみ、記憶力などの確認する講習予備検査(認知機能検査)を受け3段階で判定をします。「問題なし」「認知機能低下のおそれ」「認知症のおそれ」に分けて判定しますが、いずれの結果でも高齢者講習を受ければ免許の更新ができました。
しかし、改正法では「認知症のおそれ」と判定された場合、医師の診断が必須となります。認知症と診断されれば免許停止や取り消しになります。
それでは「問題なし」「認知症のおそれ」の判定の場合はどうなるかというと、「臨時認知機能検査」と受けなければなりません。これは、信号無視や一時停止などの認知機能が低下することによって起こしやすい違反行為に及ぶのを防ぐためです。
車の運転には「認知」「判断」「操作」の高度な技術が必要になるため、このような検査を行います。一瞬の判断ミスが大きな事故の原因となるので、とても大事な要素です。
60代でも認知症予備群になる可能性
道路交通法のよる認知機能の検査は、認知症患者が増え始める75歳以上が対象になります。しかしながら高齢者講習を受ける60代の人の中にも認知症の疑いがある人がいるそうです。
アルツハイマー型の認知症などに急になるのもではなく、長年に渡って原因物質が脳にたまり始めるのが原因です。このような場合は60代で発症していなくても「軽度認知障害(MCI)」と呼ばれる認知症の予備群になっていることもあります。
だだし、現在は認知症は予防できるというのが医学的な考えです。MCIの段階であれば回復も期待できます。
認知症は早い段階で気づくことが大切で、予備群になっている場合は運転中になんらかの支障をきたしていることが多く、本人や家族がこの違和感を見逃さないことが重要となってきます。
長年の習慣で身についた運転技術はMCIや認知症でもすぐに失われることはありません。しかし、視空間認知機能や判断力などの衰えは表面化します。ブレーキとアクセルを踏み間違えるような自分の意志に反したことが起こるとパニックに陥りやすくなる特徴があります。
運転免許証の返納問題
高齢者は「交通弱者」ともいわれますが、ドライバーとして事故を起こせば加害者側になります。車道はスポーツでいえば現役と引退した選手が同じ試合に出ているようなもので身体機能が衰えてからの運転はリスクを伴っていると自覚することが重要です。
個人差はあるものの、年を取れば誰でも視野が狭まり、見えているようでも良く見えていないこともあります。速度を落としたり夜の運転は控えるなどの工夫も大切ですが、危険ならば免許証を返納するというの決断も必要です。
そうはいっても交通の便が悪く、車がないと生活できない地域もあるでしょう。家族が返納を勧めても反発されるだけであり、車に替わる移動手段を考えないと聞き入れてはもらえないでしょう。
ある調査によると高齢ドライバーの約8割は運転に自信があるという結果がでており、それが返納しない最大の要因にもなっているようです。
免許返納ばかりを勧めても余計に反発されるので家族が助手席に乗り、事故になりやすい点を教えてあげるのもいいでしょう。本人の自尊心を傷つけないように、さりげなくアドバイスするのがポイントです。
車の運転が認知症予防になっているという考え方もあります。高齢になったら定期的に認知能力を把握し、安全運転を心がけたいものです。
まとめ
- 道路交通法の改正:認知機能検査で「認知症のおそれ」と判定された場合、医師の診断が必須となる。
- 60代でも認知症予備群になる可能性がある。
- 運転免許証を返納しなのは、運転に自信があるからという場合が多い。
高齢者の運転は傍から見ていると危ないなと感じることがあります。もしかしたら本人も気づいているのかもしれませんが、運転しなくてはならない環境であったり、自分の運転は大丈夫だと自信があったりで難しい問題です。
一番の問題は高齢者が運転しなくてはならない環境であることではないでしょうか。家族の問題、地域性の問題など、こちらを解決しない限りいつまでたっても高齢者の事故は減らないように思います。