日本の古来からの年中行事として、いずれも先祖のお墓参りをするお彼岸とお盆の行事があります。このお彼岸とお盆の行事の違いは意外と知られていません。ここではその違いを考えます。
お彼岸とは
彼岸とは仏教用語で、涅槃や極楽の意味であり、三途の川の向こう岸を表す言葉です。これに対して私達が住む現世は、「此岸(しがん)」と言います。
お彼岸は年に2回あり、春分の日と秋分の日を中日とし、各々前後3日の各7日間あります。先祖供養のお墓参り等のお彼岸の行事が、このタイミングで営まれる理由は、春分の日と秋分の日は昼と夜の長さがほぼ同じで、また真東から太陽が昇り真西へ沈む日です。
仏教では極楽浄土は西方浄土とも呼ばれ、西の方にあるとされており、太陽が真西に沈む春分、秋分の日は、現世の此岸と極楽浄土である彼岸が最も近づく時と考えられ、先祖供養等を行うには最良の日とされて来たのです。
お盆とは
お盆は仏教用語では盂蘭盆会(うらぼんえ)と呼ばれる行事で、インドから伝わった伝承と日本古来の習慣が交じり合い、西暦600年頃から今日の行事となったと言われています。
お盆は旧暦の8月15日と前後の3日間で、新暦でもそのまま8月15日をお盆として行事が営むのが一般的となっています。お盆の行事は、先祖の霊を年に一度、里帰りとして我が家に迎える行事です。迎え火を焚き、先祖の霊を迎える為に、お墓参りに出かけます。
親族が亡くなって初めて迎える初盆は、特に丁重に迎える事が習慣となっていますが、これは忌明けをして仏になった霊が、初めて家に戻って来るため、盛大にお迎えをしようとの考えからです。
毎年8月16日に京都では五山の送り火の行事が行われますが、これは各家に戻っておられた先祖の霊を、お送りするためのものです。
お彼岸とお盆のお墓参りの意味の違い
先に記載した両行事の主旨の違いから、お墓参りの意味の違いは以下の通りと言えるでしょう。お彼岸は、先祖供養するのに最良の日に、お墓に参って先祖の供養をするのが主旨です。
一方のお盆のお墓参りは、家に戻る先祖の霊を、我が家にお連れするために、迎えに行くのが主旨です。いずれもお墓参りをする点では同じですが、先祖を敬う気持ちが厚い人でも、こうした趣旨の違いがある事は意外と知らないのが実情です。
もちろん主旨の違いが分からなくても、先祖を敬う気持ちからお墓まりをするだけでも良いですが、その趣旨を理解してお参りする方がよりベターと言えるでしょう。
まとめ
お彼岸は現世の此岸と極楽浄土である彼岸が最も近づく時に先祖供養を行うことです。一方、お盆は先祖の霊を年に一度、里帰りとして我が家に迎える行事です。どちらもお墓参りに変わりありませんが、供養の仕方と意味合いが違います。
ですが、このようなお彼岸やお盆に疎遠になりがちな身内が集まるきっかけになるのはよいことなのではないでしょうか。亡くなられた方たちも久しぶりに集う家族を見て、さぞかし喜んでいることと思います。