白くて雪が飛んでいるように見える「雪虫」の正体とは何でしょうか。また、その驚くべき生態についてご紹介します。
雪虫の季節
紅葉も終わりに近づくと葉の残る針葉樹の周りを飛び始める虫たちが居ますね。そう、秋の終わりを知らせる雪虫です。
この雪虫が飛び始めると、「もう秋も終わりかぁ」と思えるのは北海道民の感覚でもあります。
ちなみに札幌で雪虫が発生するのは、例年では10月半ば頃からです。
知って驚き雪虫の正体は?
そんな雪虫の正体は何とアブラムシの仲間だったんです。アブラムシの中でもタマワタムシ科に属するものを雪虫と呼びます。(雪虫の正式名称はトドノネオオワタムシ)
アブラムシは植物の葉を傷める虫として嫌がられていますよね、ベランダ菜園をしている私も嫌いです。このアブラムシ、春から夏にかけては単為生殖と呼ばれる方法で爆発的に増えていきます。
単為生殖は本来は雌と雄がいて交尾をすることで子孫を残す生き物が、交尾をすることなく子孫を残せる方法です。生物にとってのメリットは、爆発的に子孫を増やせることです。
逆にデメリットは生まれてくる子どもがクローンであることです。単為生殖はアブラムシだけではなく、ダニやミジンコも行うことができるそうですよ。
このように変わった子孫の残し方をするアブラムシですが、秋から冬にかけては事情が違います。この季節になると、冬の季節を超えるために交尾をして卵を産み子孫を残しておかなければいつまでもクローンのままです。
秋から冬にかけて産まれるアブラムシは交尾ができるような体で生まれてきます。それが飛び回っている姿が雪虫というわけです。
雪虫の3不思議?
- 何故集団で固まるの?
雪虫が大きさ数10㎝の塊になって飛ぶ光景、もうすぐ寒くなるなぁと思えますよね。さて、何故雪虫は1匹1匹で飛ばないのでしょうか?それは、雪虫が飛ぶ理由は交尾のためだけにあるからです。
雪虫が生きていられる期間は1週間程度と言われています。その限られた期間内にカップル同士を見つけるのは、合コンが1番効率が良いようですね。
秋の風物詩、雪虫の集団は実は雪虫たちの合コンしている場面に出くわすということです。
- 服や髪の毛にくっつきやすいの?
雪虫の集団の近くを通ると、髪や服に雪虫がくっつきますよね。大きな集団の中をくぐってしまうと、もう大変です。髪の毛や服にくっついた雪虫、はらうだけで死んでしまいそうですが、自分でも離れることができなさそうですよね。
何故でしょうか?
それは雪虫の羽の付け根にある白い部分は蝋(ろう)でできているためです。それで、すぐにくっついてしまうのです。
- 何を食べているの?
白くてフワフワと雪のように舞う雪虫、普段は何を食べて暮らしているんでしょう?雪虫の幼虫に当たるアブラムシは植物から栄養を吸い取って食べていました。
成長した雪虫は………実は何も食べないそうです。
そもそも食べるための口や顎がなく、交尾をして卵を産むためだけの雪虫は、空を舞い始めてから1週間程度で力尽きて死んでしまう、はかない命なのです。
雪虫のまとめ
秋の終わりを告げる、おそらく私たちが屋外で見かける最後の虫、雪虫。雪虫の正体は実は植物の大敵のアブラムシ、ガーデニングや家庭菜園で私たちを悩ませるアブラムシの冬を越えるための姿でした。
雪虫が大きさ数10cmくらいの塊になって飛んでいるのには交尾のための相手を探している理由がありました。そんな雪虫は、羽の生えた成虫になってからは食事をとることもなく、寿命も1週間くらいと儚い間です。
子どもたちのために一生懸命に飛び回る姿は、正体が植物の大敵のアブラムシと知っても、なんだか健気に思えますね。