前回のお話で、誤嚥性(ごえんせい)肺炎という病気があることを知っていただきましたね。誤嚥は食事やお水の他にも、自分の唾を飲み込む嚥下が健康なときのように行えないために起こります。この状態を摂食嚥下障害。そして、誤嚥で肺に細菌のついた食べ物や唾が入ってしまい炎症を起こした状態を誤嚥性肺炎といいます。
命を奪われる可能性のある誤嚥性肺炎ですが、健康な方であれば若い方がなることはほとんどありません。今回は誤嚥性肺炎がどのようにして起こるのかを、5W1H1Rに当てはめて考えてみましょう。
【前回の記事】
誤嚥性(ごえんせい)肺炎とは?高齢者に肺炎が多い理由
誤嚥の5W1H1R
- いつ誤嚥するの?(When)
さて、誤嚥はいつ起こっているのか?食事やお水を飲んでいるときは、まさに「飲み込んでいます」と思い浮かべやすいですね。他にも歯磨きのときです。
歯磨きのときには、健康な人は汚い水を「飲まないように」しています。実は、摂食嚥下障害の方は口の中に入ったものを「飲まないように」貯めておくこともまた難しいことになります。
そしてもう1つは、唾を飲んでいるときです。日中、私たちはよだれを垂らすことはないでしょう。それは唾を飲んでいるからです。
それでは夜はいかがでしょう?もちろん寝ている間です。寝ている間も出続ける唾を私たちは自動的に飲み込んでいます。この力が衰えた摂食嚥下障害の方は夜寝ている間、唾を誤嚥しやすいといわれています。
- どこで誤嚥してるの?(Where)
誤嚥はどこで起こっているのでしょうか?実は、摂食嚥下障害の方にとってはどこでも起こっています。
なかでも、一番起こりやすいのがベッドや布団で寝ているときです。理由は寝ている時に唾を誤嚥しやすいためです。
次に食卓です、飲食のときに誤嚥や窒息は起こりやすいといわれています。
- どのような人が誤嚥するの?(Who)
どのような人が誤嚥をしやすいのでしょうか。
私たちが物を飲み込む力は、歩くことや立ち上がることと同じく、筋肉で体を思い通りに動かす運動になります。この運動が今まで通りできないために誤嚥は起こります。
運動が今まで通りできないことにはいくつか理由があります。脳梗塞や脳出血で体に麻痺が起こってしまうこと、75歳以上の高齢の方、横になりがちな生活が続いて筋肉が衰えた方、顔や首のガンの放射線治療で筋肉が硬くなってしまった方。
つまり顔周りや首の運動が衰えてしまった方が誤嚥をしやすいといわれています。
- 何を誤嚥するの?(What)
さて、摂食嚥下障害の方は何を誤嚥しやすいのでしょうか?大きく3つに分けられます。
1つ目は、思い浮かべやすい硬くて弾力のあるものです。コンニャクなどは弾力があり、いかにも誤嚥しやすそうですし、煎餅はいつまでも硬いままですね。
2つ目はパサパサと乾燥しているものと、バラバラになりやすいものです。お魚やそぼろはバラバラですし、パンは乾燥していますね。
さて、3つ目は意外ですよ。答えは水分です。水分は一見飲みやすそうに思えます。ですが、形のない水分は喉に素早く入っていくため、喉の運動が間に合わず誤嚥をおこしやすいことが明らかになっています。
- なぜ誤嚥するの?(Why)
誤嚥はなぜ起こるのでしょう?
食事や飲み物を食べ、口の中に溜まる唾液を飲み込む力を摂食嚥下機能といいます。この力は何ら特別な力ではなく、歩いたり手先を動かしたりすることと同じ体が元々備えている能力です。
病気や年を重ねることで、この摂食嚥下機能が衰えてしまうと、足の筋力が衰えて転びやすくなるように、間違えて気管に入ってしまう誤嚥が起こってしまいます。
- どのように誤嚥するの?(How)
どのように誤嚥をするのか?それを知るためには、正しく食べ物や飲み物を飲み込む仕組みを知っておく必要があります。
- 食べ物や飲み物を見て、香りを嗅いで口に運ぶ
- 食べ物を口に入れて、歯で?み砕き舌の上にまとめる
- 舌の動きで喉の方へ押し込む
- 喉に砕かれた食べ物が溜まると喉が動いて「ごくん」と飲み込む
- 食べ物は食道を通って胃に運ばれる
この中で誤嚥に直接関係しやすいのは、③舌の動きで喉の方へ押し込む、④喉に砕かれた食べ物が溜まり「ごくん」と飲み込む段階です。
この2つでは、口の中に見える舌、頬、喉の奥にあるのどちんこ、病院で触られるとオエッと吐きそうになる咽の奥の咽頭、喉仏のある喉頭、気管に蓋をする役割のある喉頭蓋、普段は閉まっていて飲み込む瞬間だけ開く食道の入り口食道入口部と呼ばれる場所、多くの場所が正しく動くことで食べ物や飲み物、唾液が気管に入ることを防いでいるのです。
- 対処方法は?(Result)
万が一誤嚥をしてしまったら…?誤嚥性肺炎は恐ろしいですが、実は誤嚥は誰にでも起こっていることです。
しかし、誰もが誤嚥性肺炎になるわけではありません。その違いとはなんでしょうか。
大きく3つの理由があります。
- 免疫力がある
- 咳で吐き出すことができる
- 口の中が清潔
まず、ばい菌のついた食べ物が気管に入ったとしても免疫力が健康であればばい菌を撃退することができます。そして、入ってきたものを咳で出すことができるからでもあります。
そして、誤嚥性肺炎の原因になるばい菌は実は私たちの口の中にいます。口の中が綺麗であれば、誤嚥をしても誤嚥性肺炎になる確率は大きく下がります。
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まとめ
【誤嚥の5W1H1R】
- いつ誤嚥するの?(When)
食事やお水を飲んでいるとき、歯磨きの時の他にも寝ているときに誤嚥はおこります。
- どこで誤嚥してるの?(Where)
1番はベッドです、次に食卓です。
- どのような人が誤嚥するの?(Who)
顔周りや首の運動が衰えてしまった方が誤嚥をし易いといわれています。
- 何を誤嚥するの?(What)
実はお水が1番誤嚥しやすい飲食物です。
- なぜ誤嚥するの?(Why)
飲食物が正しく食道に入らず、間違えて気管に入ってしまうためです。
- どのように誤嚥するの?(How)
お口や咽の動きが衰えてしまい、気管の入口が閉じないため誤嚥をしてしまいます。
- 対処方法は?(Result)
誤嚥をしても口の中が綺麗であれば、誤嚥をしても誤嚥性肺炎になる確率は大きく下がります。