最近、よく耳にする「誤嚥性肺炎」とは、いったいどんな症状をいうのでしょうか。また、高齢者に肺炎が多いのはなぜでしょうか。
高齢者に肺炎が多い理由
肺炎という病気はよく知られた身近な病気でもあります。2017年度の厚生労働省の発表では、日本人の死因第3位で、年間に亡くなる方の9.4%が肺炎です。
肺炎で亡くなる方の内訳は、海外では幼い子どもが多いのですが、日本国内では逆に高齢者の方が多い結果です。海外で幼い子どもが多い理由、それは主に新興国など医療機関の整備が不十分であることと、住民の方の医学的な知識が乏しいことが挙げられます。
逆に日本国内で高齢者の方が多い理由、これは主に3つの理由が考えられます。
- 高齢化
日本は世界の中でもトップの高齢化社会です。長生きは良いことですが、年齢を重ねることで体の免疫力も病気から回復する力も衰えてしまいます。
そのため、若い頃には感染することはなかった空気中や室内の細菌に感染してしまうことがあります。
また、例えば風邪にかかった方がそのまま肺炎になってしまうこともあります。高齢化で基礎的な免疫力が衰えることが1つの理由です。
- 慢性呼吸器疾患
もう1つの理由は慢性呼吸器疾患です。肺気腫や無気肺、慢性気管支炎などとも呼ばれています。簡単にお話しすると、今後完全に良くなることはない気管支炎や肺の損傷のことです。
高齢者の方に多い理由は、タバコや昔使われていた暖房、春先の舗装の埃(ほこり)など今よりも煙や塵(ちり)の多い空気に晒されたためといわれています。
慢性呼吸器疾患では、呼吸をする力や気管の中の痰を出す力が衰えてしまいます。そのため肺炎にかかりやすくなります。
- 誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)
もう1つが誤嚥性肺炎と呼ばれる肺炎です。最近ではCMでも言葉を聞くようになりましたね。今回は誤嚥性肺炎の詳しいお話しになります。
誤嚥性肺炎とは?
- 誤嚥性肺炎の前に知りたい「嚥下(えんげ)」という言葉
誤嚥性肺炎という言葉をよく耳にするようになりました。この誤嚥性肺炎は「誤嚥+肺炎」という2つの言葉に分けられます。肺炎はよくご存知ですね。
そこで、「誤嚥」という言葉です。この言葉は「誤+嚥」と分けられます。「嚥」とは、「のむ。物を飲み込む。のど。」の意味があります。この「嚥」は「嚥下」という言葉の略です。
「嚥下」とは、唇や頬など顔の周り、舌や歯、のどちんこなどの口の中、風邪をひいた時に腫れる咽頭(いんとう)や喉頭(こうとう)が精密機械のように動くことで飲食物や唾液を飲み込む動作のことをいいます。
- 摂食嚥下障害
この飲食物や唾液を飲み込む「嚥下」の働きに支障が出ることを「嚥下障害」といいます。さらに、食事を食べたり唾液を飲むことは口の中や咽の働きだけではありません。
急に視力を失ったり、嗅覚や味覚を失えば今まで通りの食事は摂れなくなります。このように食べ物が口に入る前の問題で起こる飲食の支障を「摂食」の働きともいいます。
この2つを合わせて、飲食に関わる力のことを「摂食嚥下機能」、支障が出ていることが「摂食嚥下障害」といいます。
- 誤嚥はなぜ起こる?
嚥下をお伝えできたところで、「誤嚥」に戻ります。誤嚥は先ほどの摂食嚥下機能が衰えることによって起こります。
咽では飲食物や唾液が食道に入るのか、空気が気管に入るのかを1秒未満の速さで精密に切り替えています。
摂食嚥下機能が衰えると、この切り替えが上手くいかず飲食物や唾液が気管に入ってしまいます。この気管に入ってしまうことを誤嚥といいます。
肺炎と誤嚥の関係
食べ物や飲み物、自分の唾液が正しく食道へ入らず気管に入ってしまうことが誤嚥、そして誤嚥よって起こる肺炎が誤嚥性肺炎です。
誤嚥性肺炎と聞くと、「食べ物が肺の中で腐ってしまい起こる」と思われがちです。実は食べ物や飲み物そのものより、口や咽にいる細菌が食べ物や飲み物と一緒に肺に入ってしまうことが原因といわれています。
口の中は以外と汚く、例えば歯についてしまう歯垢の中に細菌はどのくらいいるでしょうか?それは、驚きの結果で大便の中にいる細菌とほとんど同じ数だそうです。つまり、口の中が汚いことも肺炎になる理由の1つでもあります。
関連記事
誤嚥性(ごえんせい)肺炎はどのようにして起こるのか?
誤嚥性(ごいんせい)肺炎の予防方法。肺炎になる前のこんな症状に注意