寒い季節になると「気分が落ち込む」、「やる気が出ない」という人は少なくありません。そのような場合は「冬季うつ」の可能性があります。寒くなると、なぜ気分が落ち込むのか、「冬季うつ」と「うつ病」の違いについて書いています。
冬になると気分がすぐれない
寒くてどんよりと曇った冬、特に日本海側では冬は毎日が曇り空で雪が降る季節ではないでしょうか?北海道の日本海側に暮らす私も鉛色の空に嫌気がさす日々が続きます。
寒さと雪による暮らしづらさもありますが、冬になると何事にも億劫でやる気が出ず、できれば1日中寝ていたい。そんな気分になる方はいますでしょうか?ただの寒さや、暮らしづらさによるものではなく、体調不良のサインかもしれませんよ。
「冬季うつ」と「うつ病」の違い
- 冬の気分の落ち込みは季節性情動障害によるもの
冬にだけおこる抑うつ気分があるのをご存知ですか?その症状は冬季うつとも呼ばれる、冬にだけ気分が落ち込みやすくなる体調の変化です。
季節性情動障害(Seasonal Affective Disorder:SAD)は冬季うつの正式名称で、他にも冬型うつ季節性気分障害とも呼ばれています。この冬季うつの特徴は10~11月頃に抑うつ気分が始まり、3~4月には元に戻ることです。
症状を自覚していて、かつ重い方は10月が訪れる前から気分が落ち込みやすいこと、3~4月は元気が出やすくなり情動的な行動を起こしやすいこともあります。
- 季節性気分障害の原因
この季節性気分障害の原因は日照時間と大きく関係していると言われています。私たちの暮らす北半球では、秋分を過ぎて冬至までの間は、日の入りはどんどん速くなり日の出は遅くなります。昼の時間より夜の時間の方が長くなるわけです。
また、日本国内でも特に日本海側では晴れた日の方が珍しい季節が続きます。そのため私たちの日照時間が不足してしまいます。そして日照時間が減ってしまうことで起こる2つのことが、冬季うつの原因と考えられています。
1つは、日光を浴びる時間が減ることで人の体の中のセロトニンが減ってしまうことです。セロトニンは気分を安定させる働きがあり、減ってしまうことで気分が下がり抑うつになってしまいます。セロトニン不足は、うつ病の原因にも考えられていますので、まさに抑うつ気分の起こる原因にもなります。
もう1つの原因は日照時間が短くなるため、人の体の中のメラトニンと呼ばれる睡眠に関係する物質が狂うことが原因の1つと考えられています。メラトニンが狂った結果、私たちの体内時計が狂い、いつまでも寝ている時間と体が判断してしまうことになります。
- うつ病との違い
まるで、うつ病のような冬季うつですが、明らかに異なることもあります。その違いは2つあり、過眠と過食が起こることです。うつ病では、眠れないことが悩みの「不眠」が起こります。かなり辛い悩みと聞いていますし、寝れないのとは体の健康も損なう重大なことです。
それに対して冬季うつでは「過眠」、起きれないことや寝すぎることが起こります。
もう1つの異なる点は、うつ病では食事が喉を通らず食欲の出ない「拒食」が起こりやすいと言われています。そのため、入院が必要なほどのうつ病の方では栄養不足による病気を起こしている方も多くいます。
ですが、冬季うつでは食べ過ぎてしまう「過食」が起こります。中でも炭水化物、糖分を含んだ甘いもの、アルコールに合うものなど健康的ではないものをたくさん食べてしまいます。
過食が起こる理由は2つあります。冬季うつでは体の中のセロトニンが不足しており、人の体はセロトニンを作る原料の1つの糖分を取り入れるために甘いものを食べようとするそうです。
過食にはもう1つの理由があります。それは、甘いものを食べることで脳の中に分泌されるβ-エンドルフィンという神経伝達物質。このβ-エンドルフィンは、幸せを感じさせてくれる物質。ですが、麻薬並みの依存性があることから、最近話題の「炭水化物依存」を起こすことにもなるようです。
冬季うつが増えている?
うつ病の辛い不眠と食べ物も喉を通らない拒食に比べて、よく寝れてよく食べられる冬季うつは一見怠け病のように思われがちです。日本国内がほとんど地域差のない生活時間で暮らしているのは、つい100年程度のことです。
それまでは、東北北陸の日本海側には、その地域の冬を乗り切る暮らし方がありました。北海道は200年前まではアイヌ民族の方を覗いて、とても生活を送れる気候ではありませんでした。
- 生活環境と生活時間が変化した
南北に長く気候の違いが大きな日本国内。東西に長い国では時差がありますから、当然生活時間も異なります。それに比べて南北に長いために、気候と日照時間の違い対しては住環境や服装で対応しているのみです。
農業や工業などの仕事に就く方が多かった戦前までは、働き方もそれぞれの地域に合わせた働き方でした。サービス業に就く方の多い現代では、日本全国どこでも同じ働き方が求められています。
- かつては気づいていなかった
そして、季節性気分障害が知られるようになり、精神科や心療内科での治療の対象になったのはこの数年です。それまでは、気分が優れず眠くなりがちなときは「まあ寒いからね」と冬になると活動的ではなくなるのは受け止められていて、自分でも気づかない程度だったのでしょう。
1年中同じ働き方の効率が求められるようになった現代では、受け止められにくいことでもあります。
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まとめ
冬の季節、気分が優れず家に閉じこもりがちです。原因の1つに、季節性情動障害(SAD)と呼ばれるものがあります。季節性情動障害は冬にだけ起こる抑うつ気分のため、冬季うつとも呼ばれています。
原因は日照時間が減り、体が日光を浴びる時間が減るためといわれています。特に日本海側にお住いの方が冬季うつになる可能性が高いといわれていますので、もし思い当たる方はご自身の不調の原因を調べてみてはいかがでしょうか?